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2025/05/24 14:19
ondeは「身に着けるジュエリーのヒストリーを知る」をテーマに、真珠や鉱石の産地や生産者の顔、そこに暮らす人々の物語を伝えてきました。手元にあるジュエリーの旅路を知ることで、世代を超えて後世に繋いでいきたくなる――そんなジュエリー、Pass the Jewel to the Next を目指しています。
この“ジュエリーの裏側”シリーズでは、デザイナーRinaが、その想いや背景を自身の言葉でお届けしていきます。
第3回目の今回は「アップサイクルメタル」がテーマ。地球の未来に繋がる新しい素材“リファインメタル”について、皆さんとシェアできたら嬉しいです。
地金とは?その種類について

皆さんは、お手元のジュエリーの「素材」がどこから来ているのか、考えたことはありますか?
ジュエリーはさまざまな素材で作られていますが、多くは貴金属から成っており、それを「地金(じがね)」と呼びます。ここでは代表的な3種をご紹介します。
金
「K18」「K10」といった表記を見たことがある方も多いのではないでしょうか。これは金の含有量(純度)を指します。純金はとても柔らかいため、ジュエリーとして使用する際には銀やパラジウムなどを混ぜて硬度を高めています。その配合により、ホワイトゴールドやピンクゴールドなど色味を変えることもできます。金は自然界で人工的に作ることができない貴重な金属で、中国、オーストラリア、ロシアなどに多く埋蔵されています(2022年データ)。
プラチナ
白色の金属であるプラチナ(白金)は、金よりもさらに採掘量が少なく、その希少性が価値を高めています。酸やアルカリにも強く、変色しにくいことから、結婚指輪などに人気の素材です。世界のプラチナの7割以上は南アフリカで産出されています。
銀
柔らかく加工しやすいため、シルバーはジュエリーに多用される素材です。SV925(銀92.5%+その他金属7.5%)が一般的ですが、黒ずみやすさが難点。ondeでは、すべてのシルバー製品に「ロジウムコーティング(プラチナ仕上げ)」を施し、輝きと耐久性、錆びにくさを実現しています。
あなたのジュエリーの地金はどこから来る?

さて、これらの金属はどのようにして採掘されているのでしょうか?
貴金属は「鉱床」と呼ばれる場所から採掘されます。採掘方法には主に以下の2つがあります。
・露天掘り:地表から大規模に削り取る方式で、爆薬や重機を用いて掘削を行う。
・坑道掘り:地下にトンネルを掘って行う方式。深く入り組んだ作業が求められます。
採掘された鉱石は、選鉱・精錬・鋳造の工程を経て、ようやく私たちの手元にジュエリーとして届きます。
貴金属採掘の裏に潜む課題

美しく輝くジュエリー。その裏には、あまり知られていない、できれば知りたくなかった、、そんな課題もあります。
環境への影響
熱帯雨林の伐採や土壌・水質汚染、金の抽出に使われる水銀による生態系や健康への影響など、採掘が自然環境に与える負荷は非常に大きいのが現実です。指輪1個分の金を採るために、20トンもの鉱山廃棄物が発生すると言われることもあります。
労働環境や人権問題
一部の採掘地域では、児童労働や危険な環境下での低賃金労働が今も続いています。十分な安全対策も取られていない中、労働者の健康や命が脅かされるケースも後を絶ちません。
地域社会への影響
鉱山開発により住民が立ち退きを強いられたり、農業や漁業といった生業が環境汚染によって立ち行かなくなる事例も各地で報告されています。
アップサイクルメタルという選択

こうした問題の背景を知ると、「新しく採らず、今ある資源を活かせないか?」と考える方もいらっしゃるかもしれません。実際、金属は何度でもリサイクルできるという特性があります。
私たちの身近なスマートフォンやパソコン、家電製品に含まれる金・銀・プラチナは「都市鉱山」と呼ばれ、リサイクルの貴重な資源源となっています。日本国内に眠る都市鉱山の金の総量は、世界の埋蔵金の約16%に相当するとまで言われており、日本は“資源大国”なのです。
都市鉱山から回収された金属は、専門の工程を経て純度の高い地金に生まれ変わります。新品と変わらない品質を保ちながら、環境負荷を大幅に削減できるという点で、アップサイクルメタルは今、ジュエリー業界でも注目され始めています。
ondeの取り組み

ondeでも、このアップサイクルメタルの可能性にいち早く着目し、できる限り多くのアイテムに都市鉱山由来の地金を採用しています。
使用しているのは、使用済み電子機器などから回収・再精錬されたK10ゴールドやシルバー。見た目や耐久性、加工のしやすさは従来の地金と何ら変わらず、むしろ**「環境に配慮した背景を持つジュエリー」**として、より誇りを持って身に着けていただけると感じています。
また、加工はアップサイクルメタルの認証を受けた国内の専門会社に委託しており、品質・安全性・トレーサビリティをしっかり確保しています。
私自身、ジュエリーデザインにおいて「美しさ」と「社会や環境への配慮」はどちらも欠かせない要素だと考えています。地球からの贈りものを“採りっぱなし”にせず、大切に使い、また次のかたちへ――。
そんな資源循環型のジュエリーこそ、これからの時代にふさわしいと信じています。
未来へ受け継ぐジュエリーのために
今回お伝えしたお話が、皆さんが身につけているジュエリーの“裏側”を考えるきっかけとなれば幸いです。そして、「アップサイクルされたメタルを選ぶこと」が、地球や社会への優しさにつながっていると感じていただけたなら、デザイナーとしてこれ以上の喜びはありません。
これからも onde は、サステナブルで豊かなジュエリーの未来を目指して挑戦を続けていきます。
限りある美しさを、未来へ。